Creative Studio Fe56+

自然農、登山、旅、制作を通して、新しい表現を探求しています。


【ロンドン3日目】


ヘンリー・ムーア|自然の中で彫刻と向き合う

■ 都市を離れる

この日はロンドンを離れ、郊外にあるHenry Moore Studios & Gardensへ向かった。

朝7時に出発し、
地下鉄と列車を乗り継いでWare駅へ向かう。

Liverpool Street駅では、
どのホームから出発するのかが分かりづらく、少し戸惑った。

駅の案内の人に聞き、Google翻訳を使いながら、
なんとか乗るべき列車にたどり着く。

当たり前のように移動できていたことが、
ここではひとつの“行動”として立ち上がってくる。

それもまた、旅の一部だった。 

■ 風景が変わる

列車に乗ると、窓の外の景色が変わっていく。

建物が減り、木々が増え、
やがて広い牧草地が現れる。

山があるわけでもなく、
劇的な景色でもない。

それでも、確実に“都市ではない場所”へと移動している感覚があった。 

■ Henry Moore Studios & Gardensとは

Henry Moore Studios & Gardensは、イギリスの彫刻家ヘンリー・ムーアが実際に制作を行っていた場所であり、現在はそのアトリエや庭園が公開されている。

ロンドン中心部から少し離れたハートフォードシャー州にあり、広大な自然の中にムーアの彫刻が点在している。

屋内の美術館とは異なり、自然の光や風、距離の変化の中で作品と向き合うことができるのが特徴である。

単に作品を「見る」場所ではなく、
自然の中で作品と関わるための空間として存在している。

■ ヘンリー・ムーアの空間

タクシーでHenry Moore Studios & Gardensへ向かう。

そこは庭園というより、
広大な牧場のような空間だった。

羊が草を食み、
その中に彫刻が点在している。

自然と作品が分離しているのではなく、
同じ空間の中で存在している。

はじめは少し肌寒く、
作品とどう向き合えばいいのか分からず、身構えていた。

しかし、歩き続けるうちに身体が慣れ、
空間に溶け込んでいく感覚があった。 

■ 距離で変わる見え方

この場所では、
「見る」というより「関わる」という感覚に近かった。

歩く
止まる
距離を変える

それによって、作品の見え方が変わっていく。

室内での鑑賞とは違い、
時間と身体がそのまま作品の一部になるような体験だった。 

■ 丘の上の作品

一番印象に残ったのは、
丘の上にあった作品だった。

遠くからでも存在が伝わり、
自然とそこへ引き寄せられていく。

最初は形の意味を探していた。

横たわる女性のようにも見えるし、
何か別のもののようにも見える。

しかし、見ているうちに、
「何か」ではなく、「どう感じるか」に意識が変わっていった。

■ 自然の中の彫刻

その作品は、自然に溶け込んでいるのではなかった。

むしろ、広い空間の中で
強い“アクセント”として存在していた。

大地の上に横たわる形。
その背後には、広がる空。

小さな存在が、
大きな空に向かって伸びていくようなエネルギーを感じた。

そこには、生命の力強さがあった。 

■ 羊と空間

作品へ向かう途中、羊たちがいた。

近づいても逃げることなく、
いつも通り草を食べている。

その光景が、この場所の本質を表しているように思えた。

特別な空間でありながら、
日常の延長にあるような自然さ。

■ アトリエで感じたこと

庭園で作品を見たあと、アトリエを見学した。

「ついに来た」という感覚があった。

これまで日本で作品を見たり、図録で何度も目にしてきたものが、
ここで生まれていた。

その場所に自分が立っていることが、
どこか現実ではないように感じられた。

アトリエには、多くのマケットが並んでいた。

ひとつひとつの形に、
試行錯誤の痕跡が残っている。

完成された作品ではなく、
そこへ至るまでの過程がそのまま残されている空間だった。

遠い存在だったヘンリー・ムーアが、
少しずつ近い存在に変わっていく。

その感覚が、不思議とあたたかかった。

■ この日のテーマ

この日のテーマは「冒険」だった。

ロンドンという整った都市を離れ、
自分の足で知らない場所へ向かう。

情報だけでは分からないことが、
実際に動くことで見えてくる。

■ この日のまとめ

2日目までは、
人が積み重ねてきた「構造」を見ていた。

しかしこの日は、
自然の中で作品と向き合う時間だった。

構造ではなく、
感覚。

説明ではなく、
体験。

その違いを、身体で理解した一日だった。

■ あとがき

ロンドンという都市を離れることで、
逆に、自分の中の軸が見えてきた。

作品とは何か。

それは、形ではなく、
「関わり方」なのかもしれない。


PAGE TOP